イソメトリック収縮(Isometric Contraction)は、筋肉が収縮して張力を発揮しているにもかかわらず、筋の長さが変化しない収縮を指す。読み方は「イソメトリックしゅうしゅく」。英語表記は「Isometric Contraction」。代表的な例としては、壁を押す動作や、重りを動かさずに支える動作などがあり、関節角度が固定された状態で筋が力を発揮している場面で見られる。
筋収縮には大きく分けて「イソトニック収縮(等張性収縮)」と「イソメトリック収縮(等尺性収縮)」が存在する。イソメトリック収縮では筋フィラメント(アクチンとミオシン)は滑走しようとするが、外部負荷が大きくて筋長の変化が起こらない状態になる。このとき筋内ではATPが消費され、カルシウムイオン濃度の変化により筋張力は発揮されるが、実際には関節運動は生じない。
イソメトリック収縮はトレーニング法としても活用される。例えばプランクやウォールシットといった静止トレーニングは、筋肉を動かさずに持続的に収縮させる典型例である。関節への動的負荷を減らしつつ筋力を鍛えることができるため、リハビリや障害予防にも用いられる。また、特定の関節角度で最大筋力を高める効果があり、スポーツ動作の補助トレーニングとしても応用される。
イソメトリック収縮は、筋肉の安定性や姿勢保持に不可欠である。例えば直立姿勢を維持する際や、物体を安定的に保持する際には多くの筋がイソメトリックに働いている。さらに、怪我や関節の制限がある場合でも比較的安全に筋力を維持・回復できる点が臨床的に重要である。また、神経筋制御の改善や、持続的筋持久力の強化にも寄与する。
研究によると、イソメトリック収縮は動的収縮に比べて血流制限が起こりやすく、その結果代謝的ストレスが増大し筋肥大にも寄与することがある。また、高血圧患者に対してイソメトリック運動が血圧低下効果をもたらすとする研究もあり、健康維持への応用が進められている。一方で、動的筋力やスピードの向上効果は限定的であるため、他の収縮形式との組み合わせが推奨される。
イソメトリック収縮は「動きがない=効果がない」と誤解されやすいが、実際には高い筋力発揮や持久力強化につながる重要な方法である。ただし、強度の高いイソメトリック運動は血圧を急上昇させる可能性があるため、高血圧や心疾患のある人は注意が必要である。また、イソトニック収縮と異なり関節可動域全体での筋力向上には直結しない点も理解すべきである。
A1. プランク、ウォールシット、握力維持などが代表的なイソメトリック収縮の例です。
A2. はい。強度や持続時間によっては代謝的ストレスを高め、筋肥大に寄与することがあります。
A3. 血圧上昇のリスクがあるため、必ず医師や専門家の指導を受けて実施することが推奨されます。