エナジーシステム(Energy System)とは、運動時に必要なATP(アデノシン三リン酸)を体内で生成・供給する仕組みの総称である。読み方は「エナジーシステム」。英語表記は「Energy System」。人体はATPを直接的に大量に貯蔵できないため、運動時にはエネルギー供給系を通じて絶えずATPを再合成している。主に「ATP-CP系(ホスファゲン系)」「解糖系(無酸素性解糖)」「酸化系(有酸素系)」の3つのシステムが存在し、運動強度や持続時間に応じて使い分けられる。
エナジーシステムは次の3つで構成される。
これらのシステムは独立して働くのではなく、運動の強度や時間に応じて重なり合いながら稼働している。
スポーツやトレーニングの種類によって優位に使われるエナジーシステムは異なる。例えば、ウエイトリフティングではATP-CP系が支配的であり、400m走のような中距離では解糖系が中心、マラソンでは酸化系が主役となる。トレーニング計画を立てる際には、競技特性に応じてエナジーシステムを意識することがパフォーマンス向上につながる。また、HIIT(高強度インターバルトレーニング)のように複数のシステムを同時に刺激する方法も効果的である。
エナジーシステムの理解は、効率的なトレーニングプログラム作成や疲労管理において極めて重要である。適切なエナジーシステムをターゲットとすることで、瞬発力、持久力、スピードなどを効率的に鍛えることができる。また、栄養戦略(糖質補給やクレアチン摂取など)や休養計画も、エネルギー代謝の仕組みを考慮することで最適化できる。
研究では、高強度トレーニングによって解糖系およびATP-CP系の酵素活性が上昇することが確認されている。また、有酸素運動の継続は酸化系の酵素活性やミトコンドリア量を増加させ、持久力を向上させることが知られている。さらに、HIITは従来の長時間有酸素運動に匹敵するかそれ以上のVO2max向上効果を示すとされ、エナジーシステム全体の効率的な強化手法として注目されている。
「ある運動は1つのエナジーシステムだけで行われる」と誤解されることがあるが、実際にはすべてのシステムが同時に働いている。運動強度や時間によって比率が変化するだけである。また、乳酸は単なる疲労物質ではなく、心臓や筋肉で再利用される重要なエネルギー源でもある。さらに、栄養状態やトレーニング状態によってエナジーシステムの稼働効率は変わるため、個別性を考慮した運動処方が必要となる。
A1. いいえ。すべてのシステムが同時に働いていますが、運動強度と時間によって主導する割合が変化します。
A2. ATP-CP系と解糖系が中心で、特に瞬発的な挙上動作ではATP-CP系が主導します。
A3. 酸化系(有酸素系)を中心に鍛える必要があります。ランニングやサイクリングといった有酸素運動が効果的です。