オーバーアンダーグリップとは、片手をオーバーグリップ(手のひらを自分の方に向けない順手)で、もう片方をアンダーグリップ(手のひらを自分側に向ける逆手)で握る持ち方を指す。英語では「Mixed Grip」または「Over-Under Grip」と呼ばれ、特にデッドリフトや重量挙げの場面で用いられる。読み方は「おーばーあんだーぐりっぷ」。主な目的は高重量を扱う際にバーの滑り落ちを防ぎ、握力の限界を補うことである。
デッドリフトなどの高重量種目では、握力が先に限界を迎えることが多い。両手をオーバーグリップで握ると、バーが指の方向に回転して滑りやすくなる。これに対してオーバーアンダーグリップでは、バーに対して両手の握力方向が逆になるため、回転が相殺されて安定性が増す。運動生理学的には直接筋力を高めるものではないが、神経筋系のパフォーマンス発揮を阻害しにくくする補助手段として重要である。
オーバーアンダーグリップは特にパワーリフティングやストロングマン競技で利用される。デッドリフトで高重量を引く際に有効であり、ストラップを使わずに記録更新を狙う場面でよく活用される。また、ラグビーやアメリカンフットボール選手の筋力トレーニングにも導入されるケースがある。ただし、片側が常にアンダーになることで筋肉や関節への負荷が非対称になりやすいため、定期的に左右の手を入れ替えることが推奨される。
オーバーアンダーグリップの最大のメリットは、握力が先に限界を迎えることを防ぎ、より大きな重量を扱える点にある。これにより背筋群や大殿筋、ハムストリングスといった大筋群に十分な刺激を与えることができる。さらに、ストラップを使わずに実施できるため、握力強化を維持しつつ高重量トレーニングが可能となる。ただし、非対称性や腱のストレスリスクも存在するため、補助具との併用や手の切り替えが重要となる。
よくある誤解として「オーバーアンダーグリップを使えば必ず安全に重い重量を持てる」という認識がある。しかし、アンダー側の肘や上腕二頭筋には強い牽引ストレスがかかり、断裂のリスクが報告されている。また、片側にねじれ力がかかるため、脊柱の回旋や肩の非対称性を助長する可能性がある。
パワーリフティングの現場では、オーバーアンダーグリップは世界記録保持者を含む多くの選手に使用されている。また、スポーツ医学の研究では、このグリップがバーベルの回転を効果的に防ぎ、高重量挙上の成功率を高めることが報告されている。一方で、上腕二頭筋腱断裂の症例研究もあり、特にアンダー側での急激な牽引に注意が必要とされている。
A1. 初心者はまず両手オーバーで基礎を固め、必要に応じて導入するのが望ましいです。
A2. 高重量や反動動作で特にリスクが高まります。正しいフォームと適切な負荷管理が重要です。
A3. 記録狙いや試合ではオーバーアンダー、通常練習ではストラップを活用して非対称性を軽減するのがおすすめです。