オーバーハンドグリップとは、バーベルやダンベル、懸垂バーなどを「手のひらを自分から遠ざける方向(順手)」で握る持ち方を指す。英語では「Overhand Grip」または「Pronated Grip」と呼ばれ、読み方は「おーばーはんどぐりっぷ」。プル系(引く動作)の種目やプレス系の安定したバー保持など、幅広いトレーニングに用いられる基本的な握り方である。
オーバーハンドグリップは、前腕伸筋群を強く関与させる握り方であり、手首や肘の安定性を高める。解剖学的には前腕の回内(プロネーション)に相当し、プルアップやバーベルローでは広背筋や僧帽筋を強調しやすい。運動生理学的には、握力や前腕の持久力がトレーニングの制限因子となる場合も多く、高重量を扱う際にはストラップなど補助具の利用が推奨される。
代表的な応用例としては、デッドリフト、バーベルロー、プルアップ、ラットプルダウンなどがある。オーバーハンドグリップを使用すると、特に広背筋や僧帽筋中部の関与が高まり、背中全体の厚みをつくるトレーニングに適している。また、懸垂ではアンダーグリップ(リバースグリップ)と比較して上腕二頭筋の関与が相対的に減少し、広背筋への負荷が強調される。さらに、ベンチプレスやショルダープレスではバーの安定保持に活用される。
オーバーハンドグリップのメリットは、握力強化、背中の筋群を強調したトレーニング効果、バーの安定性向上である。また、一般的な「順手」のため習得が容易であり、多くの種目で汎用性が高い。さらに、競技や日常生活における物の持ち上げ動作に近いため、実用的な筋力発揮にもつながる。筋力トレーニングの基盤を築く上で欠かせない握り方の一つである。
よくある誤解として「オーバーハンドグリップだけで十分」という考え方がある。しかし、握り方によって強調される筋群は異なるため、アンダーグリップやニュートラルグリップとの使い分けが重要である。また、高重量では握力が先に限界に達しやすく、狙った筋肉への刺激が不十分になることもある。
研究では、プルアップにおけるオーバーハンドグリップはアンダーグリップと比較して広背筋の活動が高いことが報告されている。また、パワーリフティングやウエイトリフティングにおいては、基礎的なバー保持動作として必ず習得される。ボディビルダーやフィジーク競技者も背中のトレーニングで積極的に使用しており、見た目の厚みや広がりをつくる上で欠かせない握り方とされている。
A1. オーバーハンドは広背筋や背中の関与が強く、アンダーグリップは上腕二頭筋の関与が増える点が異なります。
A2. 可能ですが、高重量ではバーが滑りやすいため、混合グリップやストラップを使用する場合があります。
A3. 握力強化トレーニングやリストストラップの活用が有効です。