オーバーフロー(ポンプ)とは、トレーニング中に筋肉内へ血液が大量に流入し、一時的に張りや膨張感を感じる現象を指す。英語では「Overflow Pump」や「Muscle Pump」と呼ばれることもあり、読み方は「おーばーふろー(ぽんぷ)」。主にボディビルディングやフィットネス文化で強調される感覚であり、外見上の筋肉の張りとともに「効いている」実感を得られるため、トレーニーにとって重要な心理的要素ともなる。
オーバーフロー(ポンプ)は、運動中の筋収縮による血管圧迫とその後の血流再流入によって起こる。筋細胞内に血漿や代謝副産物(乳酸、水素イオンなど)が蓄積することで浸透圧が上昇し、血液や水分が筋細胞内外に滞留する。この現象は一時的なものであるが、細胞膨張によって筋合成を促すシグナルが活性化する可能性が研究で示されている。生理学的には「代謝ストレス」の一部として分類され、筋肥大の補助的要素と考えられている。
オーバーフロー(ポンプ)を強調するためには、中〜高回数(10〜20回前後)の反復と短い休息(30〜60秒程度)が有効である。また、スーパーセット、ジャイアントセット、ドロップセットといったテクニックを用いることで、持続的に筋肉へ血流を集中させやすい。特にボディビルダーは大会前にポンプ感を狙ったトレーニングを行い、筋肉をより大きく見せる工夫をしている。一方で、アスリートにとっては持久的な筋持久力向上や代謝刺激として応用されるケースもある。
オーバーフロー(ポンプ)のメリットは、筋肉への血流増加による栄養供給や老廃物排出の促進、トレーニング中の「効いている」感覚によるモチベーションの向上にある。また、細胞膨張による代謝ストレスは筋肥大を補助する可能性があるため、筋力向上とは別の観点で意義を持つ。さらに、見た目の張り感は自己効力感を高め、継続的なトレーニング意欲にもつながる。
「ポンプが強ければ筋肥大する」という誤解が多いが、実際にはメカニカルテンション(力学的負荷)が筋肥大の主因である。オーバーフロー(ポンプ)はあくまで補助的な要素であり、基礎的な負荷漸進が伴わなければ効果は限定的である。また、過度にポンプを追い求めることでフォームの乱れや過剰ボリュームにつながる場合がある。
Brad Schoenfeldらの研究により、代謝ストレスは筋肥大の刺激因子のひとつである可能性が示されている。実際にボディビルダーは、トレーニングの最終種目にポンプ系の高回数種目を取り入れることが多い。一方で、パワーリフティング競技者はポンプよりも最大筋力発揮を重視しており、トレーニング哲学の違いとして現れている。これらの事例は、オーバーフロー(ポンプ)が目的や競技特性に応じて活用される現象であることを示している。
A1. いいえ。筋肥大の主因はメカニカルテンションであり、ポンプは補助的要素にすぎません。
A2. 高回数トレーニング、短い休憩時間、スーパーセットやドロップセットが効果的です。
A3. 通常は数十分から数時間で解消し、長期的な肥大効果とは異なります。