ケトアシドーシス(Ketoacidosis)とは、血液中のケトン体が過剰に増加し、血液のpHが酸性に傾く病態である。読み方は「ケトアシドーシス」。英語表記は「Ketoacidosis」。主に糖尿病患者(特に1型糖尿病)で見られる「糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)」が代表的であるが、長期の絶食やアルコール多量摂取でも発生することがある。
ケトアシドーシスは、体内でインスリンが不足した状態やグルコース利用障害が生じると、脂肪酸が分解されてケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン)が大量に産生されることで発生する。通常、ケトン体はエネルギー源として脳や筋肉で利用されるが、過剰になると血液の酸性度(pH)が低下し、代謝性アシドーシスを引き起こす。腎臓や呼吸による緩衝作用である程度調整可能だが、限界を超えると生命に危険を及ぼす。
長時間の激しい有酸素運動や断食状態では、体内グリコーゲンが枯渇すると脂肪酸の分解が増加し、ケトン体産生が促進される。この場合、軽度のケトーシス(血中ケトン体増加)はエネルギー代謝の一形態として生理的に安全である。しかし、糖尿病患者や極端な低炭水化物ダイエットでは過剰なケトン体蓄積がケトアシドーシスを引き起こすリスクがあるため、注意が必要である。
ケトアシドーシスは病態としての危険性が高く、血糖値の急上昇、脱水、電解質異常を伴うため迅速な医療対応が必要である。一方で、適度なケトン体産生はエネルギー供給の補助として有用であり、絶食時や持久運動時の代謝適応の一部として生理的に利用される。理解することで、糖尿病管理や低炭水化物食、運動時の代謝調整に役立つ。
研究では、糖尿病性ケトアシドーシスの発症はインスリン不足とストレスホルモンの増加により脂肪分解が亢進することが原因とされている。また、運動や断食による生理的ケトーシスと病態的ケトアシドーシスは血中ケトン体濃度や血糖値、酸塩基平衡の違いで明確に区別される。臨床では、血中β-ヒドロキシ酪酸測定や血液ガス分析が診断に用いられる。
「ケトン体が増える=危険」と考えられがちだが、適度なケトン体産生は生理的であり問題ない。病態的ケトアシドーシスは高血糖やpH低下を伴うため区別が必要である。また、糖尿病でない人が軽度ケトーシスになる場合は代謝適応であり、運動や食事制限の一環として安全に起こる。
A1. 主に1型糖尿病患者やインスリン不足状態の人に起こりやすいです。
A2. 健常者の場合は軽度のケトーシスにとどまり、病的なケトアシドーシスになることは稀です。
A3. 血糖管理、適切なインスリン投与、十分な水分補給、極端な低炭水化物食の回避が有効です。