コルチゾール(Cortisol)は、副腎皮質から分泌される代表的なグルココルチコイドの一種で、「ストレスホルモン」とも呼ばれます。糖質・脂質・タンパク質の代謝調整や炎症の抑制、免疫応答の制御など多面的な作用を持ち、生命維持に不可欠なホルモンです。日内変動があり、通常は早朝に分泌量がピークとなり、夜にかけて低下していきます。
コルチゾールの分泌は、視床下部-下垂体-副腎(HPA軸)によって調整されています。視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌され、下垂体前葉からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が放出されることで、副腎皮質からコルチゾールが分泌されます。運動、心理的ストレス、低血糖、炎症などが分泌促進の要因となります。
コルチゾールは筋肉に対して以下のような影響を及ぼします。
高強度トレーニングや長時間の有酸素運動はコルチゾール分泌を増加させます。急性の分泌はトレーニングのエネルギー需要に対応するために役立ちますが、過度な負荷や休養不足は慢性的な高値を招き、筋分解や疲労感、免疫低下につながります。適切な運動強度と休養のバランスが重要です。
運動後に炭水化物とタンパク質を摂取することで、血糖値が安定し、コルチゾール分泌が抑制されやすくなります。ビタミンCやオメガ3脂肪酸には抗ストレス作用があり、過剰なコルチゾールの影響を軽減することが報告されています。また、アシュワガンダやロディオラなどのアダプトゲンはストレス応答の調整を助けるサプリとして注目されています。
コルチゾール不足(副腎不全)は低血糖、低血圧、倦怠感、体重減少を招きます。一方、過剰分泌(クッシング症候群や慢性的ストレス状態)では中心性肥満、筋肉量低下、骨粗しょう症、高血圧、免疫抑制などの健康リスクが高まります。正常な分泌リズムを保つことが心身の健康に不可欠です。
研究では、コルチゾール分泌が運動後に一時的に増加することが示されており、エネルギー供給や代謝調整に重要な役割を果たしているとされています。しかし、慢性的な高コルチゾール状態は筋力低下や肥満、精神的な不調と関連することが報告されており、ストレスマネジメントの重要性が強調されています。
「コルチゾールは悪いホルモン」という誤解がありますが、適切な範囲での分泌は健康に不可欠です。問題となるのは慢性的に高い状態が続く場合であり、十分な休養・睡眠・栄養バランスの確保が最優先です。サプリメントで安易に抑えるのではなく、生活習慣全体の見直しが重要です。
A1. はい。慢性的に高値が続くと筋タンパク質の分解が進み、筋肉量低下につながります。
A2. 十分な睡眠、栄養バランスの取れた食事、ストレス管理、適度な運動が有効です。
A3. 高強度や長時間の運動では一時的に上昇しますが、適度な運動はストレス軽減に役立ち、長期的には安定化につながります。