運動学

セントラルファティーグ

セントラルファティーグとは？

セントラルファティーグとは、中枢神経系（脳や脊髄）が原因となる疲労のことを指します。読み方は「セントラルファティーグ」、英語表記は "Central Fatigue" です。筋肉や末梢組織の疲労とは異なり、運動能力の低下が神経系の信号伝達や運動命令の発信能力の低下によって引き起こされる現象を表します。

生理学的・科学的な概要

セントラルファティーグは、運動中や長時間活動後に脳の運動皮質や脳幹、脊髄運動ニューロンの興奮性が低下することによって発生します。これには神経伝達物質の変化（セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど）や、神経内のイオンバランスの変動、神経活動の抑制性物質の増加などが関与しています。結果として、筋肉に送られる神経信号が減少し、力の発揮や持続力が低下します。

トレーニングや運動との関係

長時間の持久運動や高強度トレーニングでは、セントラルファティーグが運動パフォーマンスの制限要因となります。例えばマラソンや自転車競技では、筋肉自体はまだ動かせる状態でも、脳からの指令が減少することでスピードやパワーが低下します。トレーニングでは、神経系の耐性向上や適切な休息を取り入れることで、セントラルファティーグの影響を抑えることが可能です。

重要性・役割

セントラルファティーグの理解は、疲労管理やパフォーマンス向上に不可欠です。過度な疲労状態を無理に突破すると、ケガのリスク増加や免疫機能低下につながります。また、スポーツや日常生活における持続的な集中力や反応速度の維持にも影響するため、休息・栄養・メンタルトレーニングを含む総合的な疲労管理が重要です。

関連する研究・エビデンス

研究によると、長時間運動中に脳内セロトニン濃度が上昇すると、疲労感や運動意欲の低下が生じることが示されています。また、ドーパミンやノルアドレナリンの増加がパフォーマンス維持に寄与することも報告されています。さらに、神経系への低強度刺激やカフェイン摂取がセントラルファティーグの軽減に効果的であることも確認されています。

よくある誤解や注意点

セントラルファティーグは筋肉の疲労とは異なるため、「筋肉が疲れていないのに動けない」状態が起こることがあります。また、精神的疲労と混同されやすいですが、セントラルファティーグは運動能力の低下に直接関与する中枢神経系の疲労です。回復には休息、栄養、軽度運動による神経活性化が重要です。