ソマトスタチン(Somatostatin)は、脳(視床下部)や膵臓(膵島D細胞)、消化管などから分泌されるペプチドホルモンで、成長ホルモン(GH)をはじめとする複数のホルモン分泌を抑制する役割を持っています。英語では「Somatostatin」と呼ばれ、「成長抑制ホルモン」とも呼ばれることがあります。
ソマトスタチンは、血中の栄養状態(ブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸の濃度)や消化管ホルモンの刺激により分泌されます。視床下部からは下垂体前葉に作用し、成長ホルモン(GH)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を抑制します。また膵臓ではインスリンやグルカゴンの分泌を抑えることで血糖値の急激な変動を防ぎます。消化管では胃酸分泌や腸の蠕動運動を調節する役割も持ちます。
ソマトスタチンは直接的に筋肉を成長させるホルモンではなく、むしろ成長ホルモンやインスリンなど筋肉成長に関与するホルモンの分泌を抑えることで間接的に筋肉代謝へ影響します。
運動は成長ホルモンやインスリン分泌を促す一方、ソマトスタチンはその過剰な分泌を抑制する役割を果たしています。高強度トレーニング後には一時的にGHが増加しますが、一定の時間が経つとソマトスタチンが分泌されてバランスを取ります。したがって、筋肥大においてはソマトスタチンの作用は「ブレーキ」のような役割を担っています。
ソマトスタチンの分泌は血糖値の上昇やアミノ酸の摂取によって刺激されます。高血糖状態ではインスリンとともにソマトスタチンも分泌され、血糖コントロールに働きます。栄養やサプリメントで直接ソマトスタチンをコントロールする方法は限られていますが、低GI食品やバランスの取れた食事がホルモン全体の調和に寄与します。
ソマトスタチン不足そのものは明確に定義されていませんが、分泌が不十分だとホルモン分泌が過剰になり、代謝バランスが崩れる可能性があります。逆に過剰に分泌されると成長ホルモンやインスリンが抑制されすぎ、成長障害や筋肉量減少、代謝異常につながる恐れがあります。腫瘍によって過剰に分泌されるケース(ソマトスタチノーマ)も報告されています。
研究では、ソマトスタチンが内分泌系の調節において中心的な「制御役」として働くことが示されています。また、ソマトスタチンやそのアナログ薬は、消化器疾患やホルモン関連腫瘍の治療薬として臨床応用されています。成長ホルモンの過剰症である先端巨大症などの治療にも利用されます。
「ソマトスタチンは悪いホルモン」という誤解がありますが、実際には体内のホルモンバランスを調整する重要な役割を果たします。筋肉成長を抑える側面がある一方、全身の恒常性を保つために欠かせない存在です。人工的に抑制・増加させることは慎重に行う必要があります。
A1. はい。成長ホルモンやインスリンを抑制するため、筋肥大にはブレーキの役割を果たします。
A2. 悪いことではありません。過剰なホルモン分泌を抑え、体内のバランスを保つための生理的な反応です。
A3. 理論的にはそうですが、全身の代謝や免疫に悪影響が出る可能性があるため、人工的な抑制は推奨されません。