タイムアンダーテンション(Time Under Tension、略称:TUT)とは、筋肉が負荷を受けて収縮している時間の総計を指す筋力トレーニングの指標です。読み方は「タイム・アンダー・テンション」で、英語表記は「Time Under Tension」です。TUTは、筋肥大や筋持久力向上を目的とするトレーニングにおいて、単純な重量や回数だけでなく、筋肉が張力下にある時間を重視する考え方として注目されています。短時間で反復回数をこなすのではなく、一定の時間をかけて筋肉を緊張させることで筋線維への刺激を最大化することを目的としています。
TUTの理論的背景は運動生理学に基づいています。筋肉は収縮時に張力がかかることで筋線維に微細な損傷を生じ、回復過程で筋肥大(筋線維の肥大)や筋力向上が起こります。研究によると、単純に重量を上げるだけではなく、筋肉が張力下にある時間を延ばすことで、特に遅筋繊維と速筋繊維の両方に均等に刺激が伝わることが分かっています。TUTの管理は、筋線維への負荷を最適化し、トレーニング効率を高める科学的手法の一つとして位置づけられています。
TUTは筋肥大を狙うトレーニングや筋持久力向上のプログラムで活用されます。例えば、ベンチプレスやスクワットでは、上げる動作(コンセントリック)を2秒、下げる動作(エキセントリック)を4秒かけて行うと、1回あたりのTUTは6秒となります。これを10回繰り返すと合計TUTは60秒となり、筋線維に持続的な負荷をかけることができます。高重量で短時間の反復よりも、筋肉にかかる時間を意識して動作をゆっくり行うことで、より効果的に筋肥大を促すことが可能です。また、TUTの調整は種目ごとに異なる筋線維特性に合わせて最適化されます。
TUTを意識したトレーニングの最大のメリットは、筋肥大の効率を高められる点です。筋肉を長時間張力下に置くことで、筋線維の損傷と代謝ストレスが増加し、成長ホルモン分泌や筋合成の促進につながります。また、短時間で高負荷を扱うトレーニングと比較して関節や腱への負担が軽減されるため、怪我のリスクが低いという利点もあります。筋持久力向上やリハビリ、特定のスポーツで必要な筋力発揮時間の延長など、多様な目的に応用可能です。
TUTに関してよくある誤解は、「長ければ長いほど筋肥大する」という考え方です。しかし、過度にTUTを長くすると筋疲労が蓄積し、フォームが崩れやすくなり、怪我のリスクが増えます。また、TUTを意識するあまり、重量を極端に下げてしまうと筋線維への刺激が不十分になる場合があります。最適なTUTは、目標筋群やトレーニング経験に応じて設定することが重要です。
研究では、TUTを管理したトレーニングは筋肥大に対して有効であることが示されています。例えば、エキセントリック動作を長く設定したグループは筋横断面積の増加が顕著であったという報告があります。また、ボディビルやパワーリフティングの現場でも、TUTを意識したスロートレーニングが取り入れられ、筋肥大や筋持久力の向上に活用されています。スポーツ選手では、パフォーマンス維持と怪我予防の両立にTUT管理が応用されています。
A1. 筋肥大を目的とする場合、1セットあたり40~70秒程度のTUTが目安とされています。
A2. 目的によりますが、筋肥大では適切な重量でTUTを意識することが効果的です。フォームが崩れない範囲で行いましょう。
A3. はい。初心者でもTUTを意識したスローな動作は安全かつ筋肥大効果を高める手段として有効です。