デヒドロエピアンドロステロン(Dehydroepiandrosterone, DHEA)は、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンで、アンドロゲン(男性ホルモン)やエストロゲン(女性ホルモン)の前駆体として重要な役割を担っています。DHEAは思春期以降に急激に増加し、20代をピークに加齢とともに減少していく特徴を持ちます。英語では「DHEA」と表記され、アンチエイジングやホルモンバランスの調整に関わる物質として研究が進められています。
DHEAは視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)によって分泌が制御されています。視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌され、下垂体前葉からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が分泌されると、副腎皮質網状層からDHEAが産生されます。ストレスや加齢、生活習慣の乱れはDHEA分泌の低下に影響します。
DHEAは直接的に強力なアナボリック作用を持つわけではありませんが、筋肉に対して以下のような間接的な効果があります。
適度な運動はDHEAの分泌を維持・促進する効果があると報告されています。特に有酸素運動や筋力トレーニングはホルモンバランスに好影響を与え、加齢によるDHEA低下をある程度補うことができます。一方で、過度な運動や慢性的な疲労は逆にDHEA分泌を抑制するリスクがあります。
DHEAそのものを含む食品は存在しませんが、栄養状態は分泌に影響します。十分なタンパク質、ビタミンC、亜鉛、マグネシウムなどはホルモン合成を助ける要素です。サプリメントとして「DHEA」が市販されており、抗加齢や筋肉量の維持目的で利用されることがありますが、国によっては医薬品扱いとなり使用規制があります。自己判断での長期摂取は推奨されません。
DHEAの不足は加齢とともに顕著になり、筋力低下、疲労感、免疫力の低下、性欲減退などにつながります。逆に過剰摂取(サプリメント利用など)では、にきび、脱毛、女性の男性化症状(声の低下、多毛)、男性の乳房肥大、ホルモンバランスの乱れなどが報告されています。
研究では、DHEA補充が高齢者の筋力や骨密度の改善、気分や性機能の向上に寄与する可能性が示されています。ただし効果の大きさや安全性についてはまだ議論があり、長期的な使用に関するエビデンスは十分ではありません。
「DHEAを摂取すれば若返る」「筋肉が劇的につく」という誤解がありますが、実際には作用は穏やかであり、万能なアンチエイジング成分ではありません。また、ホルモン系に直接作用するため、副作用リスクが存在します。使用する場合は医師の指導が望ましいです。
A1. 適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理、栄養バランスの取れた食事で自然な分泌を維持しやすくなります。
A2. 筋肉に直接的な強力作用はなく、主に前駆体として間接的にサポートします。大きな効果を期待するのは誤解です。
A3. 医師管理下であれば利用されるケースもありますが、長期的な安全性には不明点が多く、自己判断での摂取は推奨されません。