ナトリウムクロライド(英語表記:Sodium Chloride、読み方:なとりうむくろらいど)は、一般的に「食塩」として知られる化合物で、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)が1対1で結合した無機化合物です。日常生活において最も身近な調味料であり、また生体にとっても必須の電解質として重要な役割を果たします。結晶としては白色の固体で、水に容易に溶解し、体液や血液の浸透圧を維持するうえで欠かせない物質です。サプリメントや点滴など医療用途でも用いられ、栄養学的にも広く研究されている成分です。
ナトリウムクロライドは、体内でナトリウムイオンと塩化物イオンに解離し、浸透圧の調整、神経伝達、筋収縮、酸塩基平衡の維持などに関与します。特にナトリウムは細胞外液の主要な陽イオンとして水分バランスを維持し、神経細胞や筋細胞の活動に不可欠です。塩化物イオンは胃酸(塩酸)の構成成分でもあり、消化吸収に寄与しています。
適切な量のナトリウムクロライド摂取は以下のようなメリットがあります。
不足すると低ナトリウム血症を引き起こし、めまい、頭痛、筋力低下、痙攣などの症状が現れます。一方で過剰摂取は高血圧、心疾患、腎臓病のリスクを高め、長期的には脳卒中や動脈硬化の要因となります。そのため、バランスのとれた摂取が求められます。
主な摂取源は食塩や加工食品ですが、天然の食材にもナトリウムは含まれます。厚生労働省の食事摂取基準では、成人男性で1日7.5g未満、女性で6.5g未満の食塩相当量が推奨されています。サプリメントや点滴での摂取は医師の指導下で行われることが一般的です。
激しい運動で大量の汗をかくとナトリウムが失われ、筋痙攣やパフォーマンス低下につながります。そのためアスリートや長時間運動を行う人は、水分とともに適度な塩分補給が推奨されます。一方、減量中やダイエット中でも塩分を極端に制限しすぎると体調不良を招くため、バランスが重要です。
多くの疫学研究では、食塩の過剰摂取が高血圧や心血管疾患と関連することが示されています。一方、アスリートに関する研究では、適切なナトリウム補給が持久力の維持や脱水予防に有効であると報告されています。また、減塩食の導入によって心血管疾患リスクが低下するエビデンスも多く存在します。
「塩はすべて悪い」という誤解がありますが、適切な量は生命維持に不可欠です。また「天然塩ならたくさん摂っても良い」という誤解もありますが、ナトリウム量は変わらないため、摂りすぎれば健康リスクは増加します。サプリメントや経口補水液の利用も必要に応じて行うことが望ましいです。
A1. はい。一般に食卓で使われる塩の主成分がナトリウムクロライドです。
A2. 汗を大量にかく運動では、水分とともに0.1〜0.2%程度の食塩を含むドリンクが推奨されます。
A3. 極端な減塩は低ナトリウム血症を招き、頭痛や筋肉の痙攣、意識障害などを起こす可能性があります。