ニコチンアミドモノヌクレオチド(英語表記:Nicotinamide Mononucleotide、略称:NMN、読み方:にこちんあみどものぬくれおちど)は、ビタミンB3(ナイアシン)の誘導体であり、体内でNAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体として重要な役割を果たす化合物です。NAD⁺は細胞内のエネルギー代謝やDNA修復に不可欠な補酵素であり、その生成においてNMNは直接的に寄与します。近年は「抗老化」や「アンチエイジング」の分野で注目を集め、サプリメントとしても利用が拡大しています。
NMNは体内で速やかに吸収され、細胞内に取り込まれた後、NAD⁺へと変換されます。NAD⁺は解糖系やクエン酸回路に関与し、エネルギー通貨であるATPの産生を助けるほか、サーチュインと呼ばれる長寿関連遺伝子の活性化にも寄与します。加齢とともにNAD⁺濃度は低下し、エネルギー代謝の効率が落ちることが知られていますが、NMNの補給によってNAD⁺レベルを回復させることが可能と考えられています。
NMN自体の欠乏は明確に定義されていませんが、NAD⁺濃度の低下は加齢や代謝異常と関連します。NMNのサプリメント過剰摂取に関しては明確な有害性は報告されていませんが、高用量の長期摂取に関する安全性データは限定的です。過剰に摂取しても吸収や代謝には上限があるため、必要以上の摂取は推奨されません。
NMNは枝豆、ブロッコリー、アボカドなどに微量含まれますが、食事から十分な量を得ることは難しいため、サプリメントでの摂取が一般的です。市販のNMNサプリメントでは1日100〜500mg程度の摂取が推奨されています。ただし、医薬品としての認可はされていないため、自己判断ではなく体調や目的に応じて摂取することが望まれます。
NMNによるNAD⁺増加は細胞内エネルギー効率を高めるため、持久力や回復力の向上に寄与する可能性があります。さらに代謝活性の向上によって基礎代謝が高まり、体脂肪の燃焼効率がサポートされることが期待されています。ダイエット中の疲労軽減やトレーニング後のリカバリー補助にも役立つと考えられています。
マウス実験ではNMN投与によって寿命延長や血糖値改善、運動耐性向上が確認されています。ヒトを対象とした臨床研究では、血中NAD⁺濃度の上昇やインスリン感受性の改善が報告されており、今後さらなる大規模臨床試験が進められています。ただし抗老化効果についてはまだ科学的に十分に立証されていない部分もあります。
「NMNを飲めば不老不死になれる」というのは誤解です。確かに細胞レベルでの老化抑制効果は期待されますが、人間全体の寿命延長が確認されたわけではありません。また「副作用が一切ない」という考えも誤りで、長期的な安全性については研究段階であるため注意が必要です。
A1. 個人差がありますが、数週間〜数か月の継続摂取で疲労感の軽減や活力向上を実感する人が多いと報告されています。
A2. NAD⁺はそのままでは体内に取り込まれにくいため、前駆体であるNMNの方が効率的に作用すると考えられています。
A3. 若年層ではNAD⁺濃度が高いため効果は限定的ですが、疲労軽減や代謝改善を目的として利用されることもあります。