ノルエピネフリン(Norepinephrine, Noradrenaline)は、副腎髄質および交感神経終末から分泌されるカテコールアミンの一種で、神経伝達物質としてもホルモンとしても働きます。英語では「Norepinephrine」と表記され、「Noradrenaline」とほぼ同義です。交感神経系の活動に深く関与し、ストレスや運動時に心拍数や血圧を上昇させ、集中力や覚醒を高める重要な役割を担います。
ノルエピネフリンは、アミノ酸チロシンを原料として合成されます。チロシンからドーパ、ドーパミンを経てノルエピネフリンに変換され、主に交感神経終末からシナプス間隙に放出されます。また、副腎髄質からも分泌され、血流を通じて全身に作用します。分泌はストレス、恐怖、運動、低血糖、寒冷刺激などで増加します。視床下部-自律神経系の活動が強い調節因子となります。
ノルエピネフリンは筋肉に直接的な肥大効果はありませんが、運動時の代謝や収縮力に影響を及ぼします。
ノルエピネフリンは運動中に顕著に増加します。特に高強度トレーニングやインターバルトレーニングでは分泌が増え、脂肪燃焼やパフォーマンス向上に寄与します。また、運動習慣を持つことがノルエピネフリンの基礎的な分泌を安定化させ、メンタルヘルスにも良い影響を与えるとされています。
ノルエピネフリン合成にはチロシンやフェニルアラニンといったアミノ酸が必要です。肉類、大豆、乳製品に多く含まれ、これらの摂取が合成を助けます。さらに、ビタミンCやビタミンB6は補酵素として重要です。カフェインや緑茶カテキンは一時的にノルエピネフリンの分泌を高め、脂肪燃焼をサポートする効果があります。
不足すると注意力の低下、疲労感、うつ傾向、無気力などが生じやすくなります。過剰な分泌は不安感、動悸、不眠、高血圧、過緊張などを引き起こす可能性があります。慢性的なストレス環境では過剰なノルエピネフリン分泌が持続し、心血管リスクが高まると報告されています。
ノルエピネフリンは学習や記憶の強化に関与することが研究で示されています。また、抗うつ薬やADHD治療薬ではノルエピネフリンの再取り込み阻害作用を利用するケースが多く、中枢神経での重要性が強調されています。運動科学の領域でも、ノルエピネフリン分泌増加が脂肪燃焼や持久力の向上に関連することが確認されています。
「ノルエピネフリンはストレスホルモンで体に悪い」という誤解がありますが、実際には必要不可欠なホルモンであり、生命活動や運動能力の維持に欠かせません。問題は慢性的な過剰状態であり、適度な分泌は健康やパフォーマンスにプラスに働きます。
A1. 呼び方の違いだけで、同じ物質を指します。Norepinephrine(米国での呼称)、Noradrenaline(欧州での呼称)です。
A2. はい。特に高強度運動や短時間の全力運動で大きく分泌が増加します。
A3. チロシンやフェニルアラニンを含む肉類、大豆、乳製品、さらにビタミンCやB6を含む食品が合成を助けます。