バルクアップ期とは、筋力トレーニングにおいて筋肥大を目的に体重や筋肉量を増加させるための期間を指す。英語では「Bulking Phase」と表記され、日本語では「増量期」とも呼ばれる。読み方は「ばるくあっぷき」。一般的に、摂取カロリーを消費カロリーよりも多く設定し、筋トレを高強度で行うことで筋肉の成長を促す。競技ボディビルダーやフィジーク選手はもちろん、筋力を必要とするアスリートもトレーニングサイクルの一環としてこの期間を設ける。
運動生理学の観点では、筋肥大のためには適切な栄養素とトレーニング刺激が必要とされる。バルクアップ期では特にエネルギー収支をプラスにし、十分なタンパク質摂取を行うことで筋タンパク合成を優位に保つことが重要とされる。スポーツ科学では「超回復理論」や「漸進性過負荷の原則」と密接に関わり、カロリーサープラスと高強度トレーニングが筋肥大を後押しすると説明される。また、インスリンやテストステロンなどのホルモン反応も筋肉成長に寄与するため、食事と休養の管理が重要となる。
実際のトレーニング現場では、バルクアップ期には高重量・中回数(6〜12回程度)の筋力トレーニングが中心となる。コンパウンド種目(スクワット、ベンチプレス、デッドリフトなど)を軸に据え、多関節運動で大きな筋群を刺激することが推奨される。また補助種目を取り入れて弱点部位を強化し、全身のバランスを整えることも意識される。加えて、食事管理ではタンパク質2g/体重1kg、十分な炭水化物、良質な脂質の摂取が基本とされる。
バルクアップ期の利点は以下の通りである。
このように、見た目の筋肉量増加だけでなく、基礎代謝や運動能力の向上にも意義がある。
誤解されやすい点として「体重を増やせばよい」という考えがある。しかし無制限に食べ過ぎると脂肪の増加が大きくなり、減量期に余分な負担がかかる。正しいバルクアップは「クリーンバルク」と呼ばれ、栄養バランスを考慮した食事管理が重要となる。また短期間で急激に増量しようとすると消化器への負担やパフォーマンス低下のリスクがあるため、1か月に体重の1〜2%程度の増加を目安とするのが推奨されている。
近年のスポーツ科学研究では、バルクアップ期におけるタンパク質摂取量やタイミングが筋肥大に与える影響が注目されている。例えば「体重1kgあたり1.6〜2.2gのタンパク質摂取が最適」というエビデンスが示されており、過剰摂取は効果を高めないことも報告されている。また、プロのボディビルダーやパワーリフターは明確にバルクアップ期と減量期をサイクル化しており、長期的な筋量増加に成功している実例も多い。
A1. 目安としては消費カロリーより300〜500kcal多めに設定するのが一般的です。
A2. 軽度〜中程度の有酸素運動は心肺機能維持に有効ですが、やりすぎると筋肥大の妨げになる場合があります。
A3. 一般的には3〜6か月程度が推奨されますが、個人の目標や体質によって調整が必要です。