バルサルバ法(Valsalva Maneuver)とは、呼吸を止めて腹圧を高めることで胸腔内圧や腹腔内圧を意図的に上昇させる手技です。読み方は「バルサルバほう」で、英語表記は Valsalva Maneuver です。もともとは心臓の機能評価や血圧測定のために用いられていましたが、運動生理学では重量挙げや筋力トレーニングの際に自然に行われる呼吸法として知られています。
バルサルバ法は、息を止めて腹筋や横隔膜を収縮させることで胸腔内圧と腹腔内圧を上げます。この圧力上昇により、脊椎が安定化し、強い力を出す際の支持となります。心血管系では、胸腔内圧の変化に応じて静脈還流、心拍出量、血圧が一時的に変動します。関連する生理現象には心拍数の変動(バルサルバ反射)、血圧調整、脊椎安定化などがあります。
筋力トレーニングや重量挙げでは、バルサルバ法を自然に行うことで体幹の安定性を高め、大きな力を発揮しやすくなります。特にスクワットやデッドリフト、ベンチプレスなどの高重量種目で有効です。しかし、呼吸を止めるため血圧が急上昇することから、高血圧や心血管疾患のある人は注意が必要です。呼吸法としては、力を入れる局面で息を止め、その後力を抜く段階で呼気を行うのが一般的です。
バルサルバ法は運動時のパフォーマンス向上、脊椎保護、体幹の安定化に重要です。適切に使用すれば、高重量のリフティングで安全性を保ちつつ最大の力を発揮できます。一方で、血圧急上昇やめまいなどのリスクも伴うため、運動の種類や個人の健康状態に応じて使い方を調整する必要があります。
研究によると、バルサルバ法を使用した重量挙げでは、脊椎の安定性が向上し、高重量を持ち上げる際の力発揮が増加することが示されています。また、心血管への影響も報告されており、特に血圧が一時的に急上昇するため、心疾患のリスクがある人への注意喚起がされています。実験では、正しいタイミングで呼吸を行うことで、リスクを抑えつつ筋力発揮を最大化できることが確認されています。
バルサルバ法は「ただ息を止めるだけ」と誤解されやすいですが、重要なのは力を入れる局面で胸腔・腹腔内圧を意図的に高めることです。また、全ての種目で推奨されるわけではなく、有酸素運動や軽い筋トレでは不必要であり、特に高血圧や心疾患の人は避けるべきです。
A1. いいえ。高重量種目や体幹安定が必要な動作で有効ですが、軽い運動や有酸素運動では不要です。
A2. はい。一時的に血圧が大きく上昇するため、高血圧や心疾患のある人は注意が必要です。
A3. 力を入れる局面で息を止め、力を抜く段階でゆっくり呼気するのが一般的です。