ホルモン

ヒューマングロースホルモン（HGH）

ヒューマングロースホルモン（HGH）とは？

ヒューマングロースホルモン（Human Growth Hormone, HGH）は、脳の下垂体前葉から分泌されるタンパク質ホルモンで、成長ホルモンとも呼ばれます。英語表記は「Human Growth Hormone」で、医学的には「ソマトトロピン（Somatotropin）」と同義です。小児期には骨や筋肉の成長を促進し、成人では代謝調整や筋肉・骨・内臓の維持に関与します。HGHはアンチエイジングやボディビルディング分野でも注目されていますが、医療目的以外での使用はリスクを伴います。

分泌される仕組みと調節因子

HGHは視床下部から分泌される成長ホルモン放出ホルモン（GHRH）によって促進され、ソマトスタチンによって抑制されます。分泌は脈動的に行われ、特に深い睡眠中や運動後に増加します。また、低血糖、ストレス、アミノ酸（特にアルギニン）、絶食状態も分泌を促進する因子として知られています。加齢とともに分泌量は減少します。

筋肉への主な作用

HGHは筋肉に対して強力な同化作用を持ちます。

• 筋タンパク質合成を促進し、筋肥大をサポート
• 筋分解（カタボリズム）を抑制
• 脂肪分解を促進し、筋肉のエネルギー利用効率を改善
• 損傷組織の修復を促進し、回復を助ける

運動との関係

HGHは無酸素運動（ウェイトトレーニング）や高強度インターバルトレーニング（HIIT）などで分泌が増加します。有酸素運動でも分泌は促されますが、強度が高い運動の方が顕著です。さらに、十分な睡眠が分泌に不可欠であり、運動と休養のバランスがHGHの働きを最大化します。

栄養・サプリとの関係

アルギニン、グルタミン、オルニチンといったアミノ酸はHGHの分泌促進に関与すると報告されています。また、十分なタンパク質摂取やビタミン・ミネラルの補給も重要です。カロリー制限や空腹時もHGH分泌を高める要因となりますが、極端な制限は逆効果になることがあります。HGHを直接補充する医薬品も存在しますが、医師の処方が必要であり、乱用は副作用を招きます。

不足や過剰がもたらす影響

HGH不足は小児では低身長症、成人では筋力低下、脂肪増加、疲労感、骨密度低下につながります。一方、過剰分泌は巨人症（小児期）、先端巨大症（成人期）、内臓肥大、関節異常、糖尿病リスク増加などの深刻な症状を引き起こします。適切なバランスが重要です。

関連する研究・エビデンス

臨床研究では、HGH補充療法が成長ホルモン欠損症の治療や筋肉量維持に効果的であることが示されています。また、アンチエイジングやスポーツパフォーマンス向上を目的とした研究も進められていますが、副作用や長期的リスクの懸念も指摘されています。スポーツ界ではドーピング対象物質に指定されています。

よくある誤解や注意点

「HGHを投与すれば必ず筋肉が増える」という誤解がありますが、実際には運動や栄養との組み合わせが不可欠です。また、医療目的以外での使用は健康被害や法的リスクを伴うため注意が必要です。自然に分泌を高めるには睡眠、運動、栄養管理が基本です。