フィルタントレーニング(Fartlek Training:ファルトレクトレーニングとも呼ばれる)とは、スウェーデン語の「Fart(スピード)」と「Lek(遊び)」に由来するランニング中心の持久系トレーニング法である。日本語では「変化走」や「スピードプレイトレーニング」と訳されることもある。この方法は、長距離走におけるスピード持久力の養成や心肺機能の強化を目的として考案され、ランニング中にスピードや強度を変化させながら行う点が特徴的である。
運動生理学的にフィルタントレーニングは有酸素系と無酸素系エネルギー供給機構の両方を同時に刺激できるトレーニングである。一定のペース走では主に有酸素代謝が優位となるが、短い加速や全力疾走を交えることで乳酸性作業閾値(LT値)や最大酸素摂取量(VO₂max)の向上が期待される。つまり、この方法は持久力を高めながらも瞬発的な加速能力を育成する総合的なランニングトレーニングとして位置づけられる。
実際のトレーニングでは、ジョギング中に急にスピードを上げたり、坂道を利用してダッシュを取り入れたりと、自由度の高い形式で行うことが多い。陸上長距離選手の基礎体力作りから、サッカーやラグビーのように持久力とスプリントを繰り返す競技まで幅広く応用される。また、一般のランナーにとってもマラソンの記録向上やダイエット効果を狙った有効な方法となる。
フィルタントレーニングのメリットは、心肺機能と筋持久力を同時に鍛えられる点にある。加えて、同じ有酸素トレーニングでも単調さを防ぎ、精神的な持続性を高めることができる。アスリートにとっては、試合中の予測不可能なペース変化に対応する力を養えるため実戦的な意義が大きい。健康面でも、脂肪燃焼効果や心血管系疾患の予防に寄与することが知られている。
フィルタントレーニングはインターバルトレーニングと混同されやすいが、インターバルは明確に時間や距離を設定して強度を調整するのに対し、フィルタントレーニングは比較的自由度が高い点が異なる。注意点としては、過度な強度変化を繰り返すと怪我のリスクが高まるため、特に初心者や高齢者は十分なウォーミングアップと段階的な強度調整が必要である。
研究では、フィルタントレーニングが長距離ランナーのVO₂maxや走行経済性の改善に効果的であることが報告されている。またサッカー選手を対象とした研究では、試合中の繰り返しスプリント能力や全体的なスタミナ向上に有効であるとされる。さらに、一般の健康増進プログラムにおいても、従来の持続的有酸素運動に比べて運動継続率が高いことが確認されている。
A1. インターバルは時間や距離を厳密に設定しますが、フィルタントレーニングは自由度が高く、状況に応じて強度を変えるのが特徴です。
A2. はい。ただし急激なスプリントは怪我につながるため、軽いペースアップから始めるのが推奨されます。
A3. 有効です。持久力とスピード変化への適応力を養えるため、レース中のペースアップに対応しやすくなります。