ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy, HRT)は、加齢や疾患によって減少したホルモンを外部から補充する治療法です。特に女性の更年期におけるエストロゲンやプロゲステロンの低下に対して行われることが多く、ホットフラッシュ、不眠、骨密度低下などの症状を緩和します。男性ではテストステロン補充療法として行われるケースもあります。英語表記は「Hormone Replacement Therapy」で、アンチエイジングや生活の質(QOL)の改善を目的とする医療分野で注目されています。
HRTは体内で自然に分泌されるホルモンの代わりに、医薬品として合成または天然由来のホルモンを補充します。女性では閉経に伴い卵巣からのエストロゲン・プロゲステロン分泌が大幅に減少し、症状が現れるためHRTが用いられます。男性では加齢によるテストステロン分泌低下が対象となります。治療は医師の管理のもとで、症状やホルモン値に応じて行われます。
HRTは筋肉に対して次のような効果をもたらすことがあります。
ホルモン補充療法と適切な運動を組み合わせることで、筋肉量や骨強度の維持効果が高まります。特に閉経後女性では、HRTと筋力トレーニングを併用することで筋肉量減少(サルコペニア)の予防に役立つとされています。一方で、HRTだけに依存すると健康リスクがあるため、運動習慣とのバランスが重要です。
HRTの効果を最大化するには、栄養状態の維持が不可欠です。カルシウムやビタミンD、タンパク質は骨や筋肉の健康維持に必須であり、HRTと併用することで効果を補完します。大豆イソフラボンなど植物性エストロゲンを含む食品やサプリメントは、軽度の更年期症状緩和に役立つ場合がありますが、HRTの代替にはなりません。
ホルモン不足は更年期障害、骨粗鬆症、筋力低下、性機能低下などにつながります。一方、HRTの過剰使用や長期使用は乳がん、子宮体がん、血栓症、心血管リスクの上昇などの副作用を引き起こす可能性があります。したがって適切な投与量と期間の管理が不可欠です。
研究では、閉経後女性のHRTが骨密度の維持や更年期症状の改善に有効であることが示されています。また、男性のテストステロン補充療法は筋肉量や性機能の改善に寄与することが報告されています。ただし、長期的なリスクについては議論が続いており、使用には慎重な判断が必要です。
「HRTは若返りの万能薬である」という誤解がありますが、実際には副作用やリスクも存在します。適切に使用すれば生活の質を改善できますが、医師の診断と定期的な検査が欠かせません。特に自己判断でのホルモン摂取は危険です。
A1. いいえ。がんや血栓症の既往がある方は適応外であり、医師の診断が必要です。
A2. テストステロン補充は筋肉量改善に効果がありますが、運動と併用しなければ大きな成果は得られません。
A3. 補充をやめれば再びホルモンは低下し、症状が戻る可能性があります。やめる際も医師の指導が必要です。