マイオカイン

マイオカインとは?

マイオカイン(Myokines)は、骨格筋が収縮する際に分泌されるサイトカインやペプチドの総称です。筋肉は単なる運動器官ではなく「内分泌器官」としての役割も持ち、運動によって様々なマイオカインを血中に放出します。これらは筋肉自体の代謝調整だけでなく、脂肪組織、肝臓、脳、免疫系など全身に作用します。代表的なマイオカインには、IL-6(インターロイキン-6)、イリシン、BDNF(脳由来神経栄養因子)などがあります。

分泌される仕組みと調節因子

マイオカインは筋収縮やエネルギー代謝の変化をトリガーとして分泌されます。特に持久的な有酸素運動や高強度の筋力トレーニング時に分泌が増加します。運動強度、時間、栄養状態、加齢などが分泌量に影響を与えます。例えば、運動による低グリコーゲン状態はIL-6分泌を促し、エネルギー供給を助けます。

筋肉への主な作用

マイオカインは筋肉自体に次のような作用を及ぼします。

  • 筋タンパク質合成を調整し、筋肥大や筋修復をサポート
  • 脂肪酸酸化を促進し、筋肉のエネルギー利用効率を高める
  • 炎症を調整し、過度な筋損傷を防ぐ
  • 衛星細胞の活性化を通じて筋再生を助ける

運動との関係

運動はマイオカイン分泌の最大の刺激因子です。有酸素運動では主にIL-6などの代謝調整系マイオカインが分泌され、筋肉と脂肪・肝臓とのエネルギー供給を調整します。一方、筋力トレーニングではイリシンなどのマイオカインが分泌され、筋肥大や骨密度改善、代謝アップに寄与します。休養不足や過度の疲労は分泌のバランスを乱す要因となります。

栄養・サプリとの関係

マイオカインの分泌は主に運動依存的ですが、栄養状態も影響します。十分なタンパク質摂取は筋修復をサポートし、ビタミンDやオメガ3脂肪酸は抗炎症作用を通じてマイオカインの効果を高める可能性があります。また、ポリフェノールや抗酸化成分は筋損傷の抑制を助け、マイオカインの働きを補完することがあります。

不足や過剰がもたらす影響

マイオカインは「不足」というよりも、運動不足によって分泌が低下することが問題です。これにより代謝低下、肥満、糖尿病、筋力低下、慢性炎症が進みやすくなります。一方で、過剰分泌が長期に続くと慢性的な炎症状態を招くこともあり、バランスが重要です。

関連する研究・エビデンス

近年の研究では、マイオカインが「運動が健康に良い理由」を説明する重要な因子であることが示されています。IL-6は炎症性サイトカインとして知られていますが、運動由来のIL-6はむしろ抗炎症的に働くことが報告されています。また、イリシンは白色脂肪を褐色脂肪様に変化させ、代謝を高める作用が注目されています。

よくある誤解や注意点

「マイオカインをサプリで摂れば運動と同じ効果が得られる」という誤解があります。しかし、マイオカインは運動によって生理的に分泌されるものであり、外部から摂取して同等の効果を得ることはできません。定期的な運動こそがマイオカイン分泌を最も自然かつ効果的に促す方法です。

よくある質問(FAQ)

Q1. マイオカインはどんな運動で分泌されますか?

A1. 有酸素運動と筋力トレーニングの両方で分泌されます。特に高強度や長時間の運動で顕著に増加します。

Q2. マイオカインをサプリで摂取できますか?

A2. いいえ。マイオカインは体内で筋肉が分泌するものであり、直接摂取はできません。運動が唯一の効果的な方法です。

Q3. マイオカインは筋肥大にも関係しますか?

A3. はい。イリシンやBDNFなど一部のマイオカインは筋肥大や筋修復をサポートする作用があります。

  • サイトカイン
  • IL-6(インターロイキン-6)
  • イリシン
  • BDNF(脳由来神経栄養因子)