CNSとは「Central Nervous System」の略称で、日本語では「中枢神経系」と訳される。読み方は「シーエヌエス」であり、解剖学や神経科学において重要な概念である。中枢神経系は大脳、小脳、脳幹、脊髄を含み、人間の運動制御や感覚処理、意思決定、学習や記憶といった高度な機能を担う中枢的役割を持つ。筋力トレーニングやスポーツパフォーマンスにおいても、このCNSの働きが非常に大きな影響を及ぼすことが知られている。
CNSは、運動生理学やスポーツ科学における中核的な概念である。筋肉を動かす命令はすべてCNSから出され、脊髄運動ニューロンを介して末梢神経に伝達される。この一連の神経伝達によって筋収縮が起こるため、筋力発揮やパフォーマンスの根底にはCNSの効率性がある。さらに、筋肥大や筋持久力の発達には末梢的な筋適応だけでなく、中枢神経系の適応、すなわち「神経系トレーニング効果」も大きく関与することが示されている。
トレーニング現場では、CNSの活性化や疲労管理が重要である。高重量のウエイトリフティングやスプリントなどの爆発的動作はCNSへの負荷が大きく、繰り返すことで中枢性疲労が蓄積する。この疲労は筋肉自体の損傷とは異なり、神経系のシグナル伝達や運動ユニットの動員効率が低下する形で現れる。そのため、プログラムデザインにおいては「高強度・低回数のCNSドリル」と「中強度・高回数の筋肥大ドリル」を組み合わせ、適切な休息を確保することが推奨される。
CNSを意識したトレーニングは以下のメリットを持つ。
また、CNSの強化は単なる筋肥大とは異なり、動作の精度やスピードを高める効果があるため、アスリートや競技者にとって不可欠な要素である。
CNSに関しては以下のような誤解や注意点が存在する。
これらを踏まえ、目的に応じてCNS負荷をコントロールすることが重要となる。
研究では、高重量トレーニングやスプリントの繰り返しによってCNS疲労が蓄積し、最大筋力や跳躍高が低下することが示されている。また、神経系の適応として「運動ユニットの同期化」や「シナプス伝達効率の向上」が起こることも報告されている。実際にオリンピックリフティング選手やスプリンターは、筋肥大トレーニングよりもCNSを重視したプログラムを導入し、爆発的なパワー発揮を実現している。
A1. いいえ。CNS疲労は神経系の疲労であり、筋肉痛とは異なる現象です。
A2. 高重量スクワット、デッドリフト、クリーン、スプリントなどがCNSへの刺激を強く与えます。
A3. 個人差がありますが、通常は48〜72時間の休息が推奨されます。