DHEA(デヒドロエピアンドロステロン, Dehydroepiandrosterone)は、副腎皮質で主に分泌されるステロイドホルモンであり、男性ホルモン(アンドロゲン)や女性ホルモン(エストロゲン)の前駆体として重要な役割を担っています。体内では血中や脳内で幅広い影響を持ち、加齢に伴って分泌量が減少することが知られています。そのため「若返りホルモン」と呼ばれることもあります。
DHEAは副腎皮質の網状層から分泌され、視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)によって調節されています。特に下垂体から分泌されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が分泌の主な刺激因子です。ストレス下ではコルチゾールの分泌が優先されるため、DHEAの分泌は低下することがあります。また、加齢や慢性的なストレス状態はDHEAの分泌低下を引き起こしやすい要因とされています。
DHEAは直接的に筋肥大を促進する作用は弱いですが、テストステロンやエストロゲンといったホルモンに変換されることで間接的に筋肉の維持・成長に関与します。具体的には筋分解を抑制し、筋力や持久力をサポートする働きがあり、回復の促進にも寄与すると考えられています。
筋力トレーニングや高強度インターバルトレーニング(HIIT)は、DHEAの分泌を一時的に高める可能性があります。有酸素運動も一定の影響を与えますが、過度の持久的トレーニングはコルチゾール優位となり、DHEAの分泌が抑制されるケースがあります。適度な休養とバランスの取れた運動習慣が、DHEAの分泌維持に有利とされています。
DHEAは体内で自然に合成されるホルモンですが、加齢に伴う減少を補う目的でDHEAサプリメントが利用されることがあります。亜鉛やビタミンDなど、ホルモン合成に関与する栄養素も間接的にDHEAの作用を支える可能性があります。ただし、外部からのDHEA摂取はホルモンバランスを変化させるため、自己判断ではなく医師の指導下で行うことが重要です。
DHEAが不足すると、筋肉量や骨密度の低下、疲労感、免疫力の低下などが起こりやすくなります。一方で過剰摂取は、ニキビ、脱毛、女性における月経異常、さらにはホルモン関連疾患のリスクを高める可能性があります。適正なバランスを保つことが大切です。
研究によると、DHEA補充は高齢者において筋力や骨密度を改善する可能性があるとされていますが、その効果は限定的であり、長期的な安全性については議論が続いています。また、スポーツにおいてはドーピング禁止物質に含まれているため、アスリートは注意が必要です。
DHEAを直接摂取すれば筋肉が劇的に増えると誤解されがちですが、実際には前駆体であるため、必ずしも筋肥大に直結するわけではありません。また、サプリとして販売されていても医薬品扱いの国も多く、使用には法規制や健康リスクを理解しておく必要があります。
A1. DHEAは前駆体ホルモンであり、直接的な筋肥大効果は限定的です。
A2. 医師の管理下での使用が推奨されます。自己判断での長期使用は副作用のリスクがあります。
A3. 高強度の筋トレや適度な有酸素運動はDHEA分泌を一時的に高める可能性があります。