SPPとは「Specific Physical Preparedness(特殊身体準備性)」の略称で、日本語では「特殊体力準備性」と訳される。読み方は「エスピーピー」であり、トレーニング理論において競技や特定動作に直結する能力を高めるためのコンセプトである。一般的な基礎体力や全般的な運動能力を示すGPP(General Physical Preparedness:一般身体準備性)に対して、SPPは競技特性や専門性に強く関連するトレーニング領域を意味する。
スポーツ科学においては、GPPとSPPの両立が重要とされる。GPPが筋力・柔軟性・持久力など幅広い基礎能力を涵養するのに対し、SPPはその上に成り立つ「競技固有の動作」や「競技に必要な筋力・パワー・敏捷性」を高める段階に位置づけられる。ソ連や東欧圏で発展したトレーニング理論では、長期的計画(ピリオダイゼーション)の中でGPPとSPPを適切に配分することが強調されてきた。
SPPは競技者のパフォーマンス向上に直接的な影響を与える。例えば、スプリンターであればスタートダッシュに必要な反応速度や地面への力発揮、ウエイトリフターであればクリーンやジャークに直結する動作を強化することがSPPの範疇に含まれる。実際のトレーニングでは、以下のような応用が見られる。
このように、SPPは単なる筋力増強ではなく、競技パフォーマンスへの直接的移行を狙ったトレーニングである。
SPPを取り入れることで得られるメリットは多岐にわたる。
これにより、単なる筋力や体力の向上だけでなく、勝負に直結するスキルと能力を磨くことができる。
SPPに関しては以下の誤解が多い。
したがって、GPPとSPPのバランスを見極めた計画的な導入が求められる。
多くの研究では、GPPとSPPを組み合わせたアプローチが最も効果的であると報告されている。例えば、陸上競技の短距離選手では、オフシーズンにおける基礎筋力とGPPの強化が、シーズン中のSPPドリルによる競技特性の発揮につながることが示されている。さらに、チームスポーツにおいても、SPPトレーニングを導入することでポジション特有の動作効率や試合でのパフォーマンスが向上した事例がある。
A1. GPPは基礎体力の向上を目的とし、SPPは競技に直結する動作や能力の強化を目的とします。
A2. 一般的な健康や体力維持が目的であればGPPで十分であり、SPPは競技者に特に有効です。
A3. ピリオダイゼーションに基づき、基礎的なGPPを積んだ後に、試合期や直前期で取り入れるのが効果的です。